こんにちは!
本屋大賞で発掘本として紹介されていたので読んでみました。
折原一さんの代表作ということなので、結構期待して読みました。
ミステリーは嫌いではないんですが…。
あらすじ
富士の樹海で失踪した息子・小松原淳の伝記を書いて欲しい。売れない作家島崎に舞いこんだゴーストライターの仕事―。
女依頼人の広大な館で、資料の山と格闘するうちに島崎の周囲で不穏な出来事が起こり始める。
この一家には、まだまだ秘密がありそうだ。五つの文体で書き分けられた折原叙述ミステリーの最高峰。
内容(「BOOK」データベースより)
感想などつらつらと

文体の変化で惑わされ驚愕のラスト…
様々な文体で、劇中劇のように文章が重なって読む人を惑わせてくるこの作品は、素直に読む人ほどだまされる快感を味わえるのではないでしょうか。
この小説の評価の高さはこのミスリードを誘う語りの巧みさにあるのだと思います。
それぞれの人物に対する思い込みや場面展開に、最後にはあっと驚かされました。
でもやっぱなんか気持ち悪い
読後感はなんだかよろしくないです。
これは個人の好みに入るものなので、好きな人は好きなんだろうなぁとは思いますが。
登場人物がだいたい気持ち悪い。
母親はふたりともなんだか子供に対する執着が半端ないですね。
(それを言うと、小松原家の父親もたいがい)
夫より子供、というか、夫の代わりの子供のようで。
小松原家の母が直接的な執着を見せていた一方、主人公の島崎の母はストーカー的なイメージになりました。
天才少年だった潤もあまり友達になりたくないタイプ。
ふつうに嫌な奴でしたね。でもその原因はたぶん両親。
妹のユキに関しては、ああも簡単にモーションかけてくるってなんか心の病というか、悪い意味で裏があるのかと。(なかったけど)
兄や母親のせいでダメになってしまったかわいそうな人なのかもしれないです。
子供を産んだあとはふつうに生きてほしい。すごく無理な気がするけど。
主人公は比較的まともかとおもいましたが、あの結末ですし、すっきりとかいう言葉とは縁遠かったです。
一番ふつうに生き、小説家を目指すふつうの人なので、かわいそうでした。
最後に淳一の母親が小説を書き始めたところで物書きの業を感じたというか、実はそんなに子供大事ではなかったのでは?みたいな気持ちにさえなりました。
小説家になる、という夢の代わりに子供に執着していたけれど、丁度残してくれた書きかけの小説もあるし、子供の弔いになるし、夢をもう一度!という感じが。
子供を失った悲しみみたいなものはあんまり感じなかったです。
この母とユキのきれいなお人形さん感が一番違和感を感じた理由でしょうか。
最後に
これは私の感じ方なので、トリックなどをおどろきながら楽しく読まれた人が大半なんだろうぁと思っています。
そんなに穿ってみなくても、という気はするんですがあまりすっきり感がなかったのでそのへんの理由を深堀してしまいました。
1993年の作品なので、樹海ももっとおどろおどろしいところとしてイメージされていたんだろうと思います。
今はもうちょっと観光地っぽくなっているようなので、単純に入っただけで死ねる、という感じではないですね。
読後感はあまりよくなかったですが、途中の話を追っていく段階はどきどきしながら楽しめましたので、読んでよかったかなと思います。
最後まで読んでくださってありがとうございました。
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