『破滅の王』あらすじのネタバレ感想(上田 早夕里著)直木賞候補作

6月18日に発表された直木賞候補作品。

どんな作品だろうと読んでみたら、すごくおもしろかったので感想を。

ネタバレが含まれますので、注意してくださいね。

「破滅の王」あらすじ

1943年6月、上海。かつては自治を認められた租界に、各国の領事館や銀行、さらには娼館やアヘン窟が立ち並び、「魔都」と呼ばれるほど繁栄を誇ったこの地も、太平洋戦争を境に日本軍に占領され、かつての輝きを失っていた。

上海自然科学研究所で細菌学科の研究員として働く宮本敏明は、日本総領事館から呼び出しを受け、総領事代理の菱科と、南京で大使館附武官補佐官を務める灰塚少佐と面会する。

宮本はふたりから重要機密文書の精査を依頼されるが、その内容は驚くべきものであった。

「キング」と暗号名で呼ばれる治療法皆無の新種の細菌兵器の詳細であり、しかも論文は、途中で始まり途中で終わる不完全なものだった。

宮本は治療薬の製造を依頼されるものの、それは取りも直さず、自らの手でその細菌兵器を完成させるということを意味していた――。

(「BOOK」データベースより)

感想

灰塚が現れてからが本番

この物語は第二次世界大戦直前の上海科学研究所を舞台に始まります。

満州事変や上海事変の直後、きな臭い社会情勢の中でともに研究に励んでいた人々も戦争の渦に巻き込まれていきます。

主人公である宮本に細菌兵器「キング」の研究の依頼がくるまでは、説明が重たくてなかなか読み進めることができませんでしたが、灰塚が現れたあたりから一気に読み進められました。

(気づいたら夜中の二時をまわっていて、家族がみんな寝ていたなど…)

科学者の信念と軍人の叙事

親友六川の失踪と「キング」の行方が絡み始め、宮本は「キング」の行方とともに真相を追い始めます。

作中に出てくる科学者はまっとうな人が多く、人の命が羽よりも軽く扱われることに悩み苦しんで、だからこそ「キング」を作った彼も壊れてしまったのかも。

細菌兵器は治療法を確立することで完璧な兵器となるという事実は、治療法を模索する宮本にとっての科学者としてのジレンマであり、科学と戦争の関係を象徴している気がします。

そして、科学を通じて世界はつながることができると信じる宮本達に、上海自然科学研究所の外で起きている現実を語る時の灰原には、それが現実逃避のように見えていたかもしれません。

灰塚には軍人としての戦い方があり、宮本にも科学者としての信念があり、それが物語の中でぶつかり合い支えあうのはとてもかっこいいと感じました。

灰塚は見栄と自尊心だけで生きてきたと自分を語っていましたが、それだけではない強さがありました。

それと、見たことのない植物に目をきらきらさせる木戸少尉はかわいかったです。かわいかったです。(大事なことなので)

細菌兵器「キング」の行方

それぞれのその後に少しにやりとしたり行方不明とされた人物のその後を考えた後の最後の数行に、細菌兵器というものの恐ろしさを再確認させられました。

最後に

戦争の闇に消えた話としてとてもおもしろく読めました。

ちょっとだけジョーカーゲームとかも思い出したり……。

科学や戦争、その中での人のつながりなどを考えさせられました。

現代史に詳しければもっと楽しく読めたかもしれません。

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