「フーガはユーガ」ネタバレあらすじ&感想・緻密で切ない双子の物語

2019年の本屋大賞が発表されました。

大賞を受賞した「そして、バトンは渡された」の他にも面白い作品がノミネートされています。

「フーガはユーガ」もその作品の一つです。

「フーガはユーガ」あらすじ

2時間差で生まれた双子の優我と風我。
彼らの父親は理不尽に暴力を振るい、母親は自分に危害が及ばないように無関心を貫く非道さ。

そんな不幸な双子に授けられたのはある特殊能力だった。

双子が特殊能力を使った最古の記憶は5歳の頃。
双子の兄、優我は自分自身を殴る父親と殴られる自分を見ていた。

「助けなくちゃ」

そう思った次の瞬間には、自分が殴られていて、それを見ている自分がいた。

正確には、最初に殴られていたのが弟の風我で、それを見ていたのが優我である。

殴られていた立場から、それを眺める立場へと入れ替わった風我は幼いながらも知識を使って優我を助け出した。


実はこの能力、ある条件下でしか発動しない。

それは双子の誕生日であること。
そして誕生日の日、2時間おきに本人たちの意思と関係なく発動されるということ。

家での酷い生活はともかく、勉強が得意な優我と、運動が得意な風我は無難な学校生活を送っていた。

そんな平凡な学校生活の中で特殊能力を使ったのはたったの一度だけ。

小学校、中学校、共にいじめられっ子であったワタボコリ 、ワタヤホコルを助けた時である。

特殊能力の特性、持ち上げられるものであれば一緒に移動できることを使い、使い古された倉庫に閉じ込められたワタヤホコルを助け出したのだ。

動機は正義感ではなく、いじめっ子に対し、父親への怒りと同等のものを感じたから。衝動的な行動だった。

高校卒業の際、双子は初めて離れ離れになる。

優我は高校へ進学、風我は中学の頃からお世話になっていたリサイクルショップに就職した。双子は決して離れ離れにはならず、お互いの経験を語り合い、まさに一心同体となった。

そんな中風我に彼女ができる。

小玉という同い年くらいの女の子である。

双子は彼女のためにも能力を使った。

両親を失った彼女の叔父が、悪趣味な性癖「水槽に沈め、もがき苦しむ女性を見て楽しむ」という性癖に彼女を強制的に利用していたのである。

少々手荒ではあったが、叔父の開催するその悪趣味な性癖のショーに忍び込んだ優我が途中で風我と変わり、風我がその叔父を成敗した。

これが彼女のために能力を使った経緯である。

時はたち、優我は実家を離れて大学に進学する。

風我は以前から小玉と同棲しており、双子はついに親元を離れたのである。

しかし、父親は優我が引っ越した先で仲良くなった親子に接触し、あろうことかその親子を拉致。

優我と風我は親子を救い出し、生まれて初めて親に抵抗することを成功させた。

だが、弟の風我は逃げ出した父親を追って事故に遭ってしまう。

兄の優我は地元のファミレスで東京の若手ディレクターを名乗る高杉という男に、特殊能力の詳細とこれまでの自分の人生を話している。

それも高杉が特殊能力の証拠映像ともいえる盗撮映像を突きつけて真相を聞き出そうとしてきたからである。

実はこの高杉という男、小学生を拉致、監禁し、残虐なやり方で殺すのを楽しむ、殺人鬼であった。

優我はこのことを知っていた。それで高杉を誘い出すために盗撮映像を用意したのである。

しかしここで優我の作戦が見事に狂ってしまった。高杉は優我を巧みに騙し、頭を凶器で殴って拉致したのである。

絶体絶命の中、優我を救った男がいた。

ワタヤホコル、通称ワタボコリである。

優我はファミレスで高杉と話す前にワタヤホコリの経営する店に訪れていた。

そんな優我のただならぬ様子が気になって跡をつけたワタヤホコルが優我を助けに来たのである。

しかし、安心するのもつかの間。異変に気付き、戻ってきた高杉に猟銃で撃たれる2人。今日は何の日か?双子の誕生日である。

「俺の弟は、俺より結構、元気だよ」

作品の途中で出てくるこの言葉を実現するように現れた風我。

そう、風我は事故に遭ったものの、1年のリハビリの末、奇跡的に生還したのである。

形勢逆転し、高杉を倒す風我。優我と風我の特殊能力が発動されたのにもかかわらず、2人が同じ場所にいるということは、どちらかが力尽きたということ。優我は命を落とした。

それからしばらくたち、風我と小玉の間には双子が生まれていた。

感想

5歳の頃の記憶から始まり、「僕が僕を見ている」なんて表現も出てきたものですから、最初は何が何だかわかりませんでした。

しかしこの作品の面白いところは不揃いのピースが綺麗に重なっていくところ。

作品の後半部分までは不揃いだったものが、そこから一気に同じパズルのピースと化しました。

特にセリフを使った伏線が多かったと思います。

最後は優我が命を落としてしまい、能力は使用できなくなったものの、後味の悪さは全くなく、むしろ清々しさを感じていました。

後味の悪さというよりは、作品中の暴力的な表現や、報われない双子や小玉の人生の方が心に重くのしかかりました。

著者について

伊坂 幸太郎(いさか こうたろう)

プロフィール

  • 生年月日:1971年5月25日 
  • 出身地:千葉県松戸市出身、宮城県仙台市在住
  • 経歴:東北大学法学部卒業

受賞歴

1996年 第13回サントリーミステリー大賞佳作(『悪党たちが目にしみる』、大幅に改訂されて『陽気なギャングが地球を回す』として祥伝社から出版)
2000年 第5回新潮ミステリー倶楽部賞(『オーデュボンの祈り』)
2004年 第25回吉川英治文学新人賞(『アヒルと鴨のコインロッカー』)
2004年 第57回日本推理作家協会賞 短編部門(『死神の精度』)
2006年 平成17年度宮城県芸術選奨 文芸(小説)部門
2008年 第21回山本周五郎賞、第5回本屋大賞(『ゴールデンスランバー』)

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