2019年本屋大賞が発表されました。
ノミネートされた10作品の中から小野寺史宜さんの『ひと』を紹介します。
惜しくも2位になりましたが、素敵な作品なのでぜひ読んでもらいたいです。
『ひと』あらすじ
柏木聖輔、二十歳。鳥取から上京し、軽音サークル、バイトと普通の大学生活を送っていました。
そんな聖輔の元にある日突然、田舎から母の死の知らせが届きます。
呆然としながらも鳥取に戻り、何とか母の納骨を済ませたものの、手元に残ったお金はわずかなものでした。
3年前に父を交通事故でなくしていた聖輔は二十歳にして天涯孤独となってしまったのです。
奨学金を返せるあてもなく、大学を中退し、途方に暮れる聖輔。
とにかく仕事を探さなければ。気持ちは焦るもののなかなか身体が動きません。そんなある日、お腹を空かせて当てもなく歩いていた商店街で「おかずの田野倉」という一軒の惣菜屋に偶然辿り着きます。
手元のわずかな所持金で買えるものは50円のコロッケだけ。
でも、最後の1個だったコロッケを、聖輔はおばあさんに譲りました。
空腹を満たすコロッケを買うことができなかった聖輔。
でも、そこから聖輔の運命は大きく動いていくのです。
田野倉の店主や先輩スタッフ。
高校時代の同級生。父のかつての同僚。
たくさんの「ひと」との出会いによって。
ネタバレ感想
わずか二十歳にして天涯孤独になってしまったら。
聖輔の人生を自分の人生に重ね合わせて読みました。
聖輔は特殊な才能があるわけでもなく、本当に普通の男の子です。
だからこそ、その孤独や寄る辺ない心細さがリアルに伝わってきて、感情移入して読むことができ、 決して恵まれた境遇ではないのに誰の事も恨まない、真面目で誠実な聖輔を応援したくなりました。
親族を名乗る男が、なけなしの金をむしり取りに来る辺りも腹立たしいほどリアルでした。
聖輔が孤独に押しつぶされそうになった時、周りの人たちが本当にあたたかくてホッとしました。
これから先の人生はもちろんまだまだ大変だろうけれど、目標や夢を持って生きて行けそうな明るい気持ちになれるラストでよかったです。
人は一人では生けていけない、心のつながりが大切なんだと改めて気付かせてくれる作品でした。
小野寺史宜(おのでら ふみのり)さんについて
- 1968年千葉県生まれ
- 2006年短編「裏へ走り蹴り込め」第86回オール讀物新人賞受賞
- 2008年『ROCKER』ポプラ社主催の第3回ポプラ社小説大賞優秀賞を受賞。同作で単行本デビュー。
代表作
まとめ
自分が一人きりで孤独を感じるようなときに、ぜひ読んでもらいたい本です。
本屋大賞では2位になってしまいましたが、順位関係なく良い作品だと思います。
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