本屋大賞候補作になった三浦しおんさんの『愛なき世界』の感想です。
個性が強く魅力的な登場人物が面白い、温かい気持ちになれる小説でした。
あらすじ
植物に恋するリケジョに恋をしたコックの見習い男子が主人公です。
国立T大学赤門の向かいの洋食屋「円服亭」の見習い藤丸陽太は、植物学研究者を目ざす大学院生・本村紗英に恋をしました。
しかし本村は三度の飯よりシロイヌナズナの研究が好きな女子でした。
藤丸は本村に会いたいがために、料理の宅配を理由にT大研究室に通うようになり、個性的な研究室の人達とも交流が始まります。
植物にしか興味のない本村にアプローチを続けていくうちに、藤丸も植物の世界にひかれていきます。
研究室では、何かと実験に爪楊枝を使用する、容器の内壁についた水分をふるい落とすためのCHIBITANという装置があるなど、素人には知る事のない世界を描いてくれています。
理系が苦手な人間にも理解しやすい丁寧な描写で、物語の世界に誘われます。
感情を持たない、愛なき植物の世界を愛情たっぷりに描き出しています。
この小説には人の役に立たせるためとか功績を残すためといった目的ではなく、ただ単に「好きだから」という理由で研究に取り組む人達の純粋さと情熱が溢れています。
感想
自分が好きな物にただ心から純粋にまっすぐ打ち込んでいる研究室の人々がとてもうらやましいと思いました。
人間、大人になると好きな事だけをして生活はしている人は少ないです。
これだけ夢中になれる事に関わって生けていけるのはほんとに素敵なことです。
植物に関する難しい表現が沢山出てくるので理解するまで大変でしたが、読んでいくうちに段々興味がわいてきました。
読んだ後、とてもほっこりした優しい気持ちになれました。
登場人物がみんな個性的で素敵でしたが、特に冒頭松田先生の存在感が際立っていました。
三浦しをん(みうらしおん)さんについて
- 1976年9月23日生まれ
- 東京都出身
- 父は上代文学・伝承文学研究者で千葉大学名誉教授の三浦佑之。
- デビュー作『格闘する者に○』
- 直木三十五賞(2006年)
- 本屋大賞(2012年)
- 織田作之助賞(2015年)
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