松尾スズキ『もう「はい」としか言えない』不倫男が妻から逃亡した先には

作:松尾スズキ 出版:文芸春秋

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6月18日に発表になった芥川賞候補の中の作品です。

電子書籍で読めるようになっていましたので、さっそく購入してみました。
ネタバレ多めです。

あらすじ

二年間の浮気が、キレイにばれた。別れたくない。二度目の結婚で、孤独な生活はこりごりだ。
妻の黒いヒールスリッパの鼻先に、海馬五郎は土下座するしかなかった……。
無条件降伏として、仕事場の解約と、毎日のセックスを、妻から宣言された。
性に淡白な海馬五郎は、追い詰められて、死すら望むものの、死ねるはずもなく、がんじがらめの日々を過ごしている。
半年ほど息苦しい生活を味わった頃、海馬五郎は、フランスのエドルアール・クレスト賞の受賞を知らされる。
「世界を代表する5人の自由人のための賞……?」
胡散臭いものだが、パリへの旅費と一週間の滞在費を支給してくれるらしい。
飛行機が嫌いで、外国人が怖い海馬五郎も、一週間は妻とのセックスを休めるというので、その誘いにのった。
これが悪夢の旅になったのである。

Kindle版には『もう「はい」しか言えない』と『神様ノイローゼ』の二作品が掲載されています。
『神様ノイローゼ』は『もう「はい」しか言えない』の主人公海馬五郎の幼少期の話です。
私はあまり好きではなかったので、今回は置いておきます。

感想

奥様の静かな怒り

浮気がばれるところから始まるこの物語ですが、なぜばれないと思ったのだろう、と思いつつ弁解すらあきらめた海馬のモノローグについ笑ってしまいました。
もう必死に離婚を回避しようと土下座をする海馬の姿はいっそ哀れ……と想いましたが、奥様の付け黒子のくだりでそのまま土下座の頭を踏んでいいんじゃないかと。(奥様のリサーチ力に背筋が寒くなりましたが)
ただ、奥様の二年間のお仕置き期間の契約内容は、本当にどちらにとってもしんどい内容です。
心底怒ってはいても切り捨てられない奥様の愛情なのか、それとも妻としての意地だったんでしょうか。

誰かに責められたい

普段イメージされる綺麗なフランスではない移民や人種問題で荒れているフランスの街で酷い目にあう海馬の姿は滑稽にも見えます。
同行する通訳のたよりなさげな美青年のほうが頼りがいありそうに見えるくらいに。
海馬はいつもどこか罪悪感を感じているんでしょうか。
自分はずっと誰かに責めてもらいたかった、というのは自分の母のことや不倫のことに負い目を感じていたから?
まあ、もしかすると、ただの性癖なのかもしれないですけど。

結局最後には自分を縛っている現実に帰っていく海馬の姿は、あきらめに似たすがすがしさを感じました。
達観というやつですかね。

最後に

普段あまり読まないジャンルの本でしたが、文章量もそんなにはなくて読みやすくおもしろかったです。
(海馬っていうとどうしても某社長のあの人が出てきてしまってちょっと思考を邪魔されがちでしたが)

最後まで読んでくださってありがとうございました。

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