こんにちは!
第160回直木賞候補作の「ベルリンは晴れているか」を読んだので、感想など書いてみたいと思います。

登場人物
- アウグステ・ニッケル: 主人公。アメリカ軍の兵員食堂で働く少女。
- ファイビッシュ・カフカ:泥棒。元俳優。アウグステと共にバーベルスベルクへ向かう。ユダヤ人…
- ユーリイ・ヴァシーリエヴィチ・ドブリギン: ロシア人。NKVD(内務人民委員部)大尉。
- アナトーリー・ダニーロヴィチ・ベスパールイ:NKVD下級軍曹
- クリストフ・ローレンツ: 音楽家。アウグステが売ったと疑われる毒入りの歯磨き粉で不審な死を遂げる
- フレデリカ・ローレンツ: クリストフの妻。戦中は潜伏者を匿う活動をしていた。
- エーリヒ・フォルスト: フレデリカの甥。劇場支配人の養子に迎えられる。
- グレーテ・ノイベルト: フレデリカの使用人
- ヴィルマ: 動物園の元飼育員でカフカの友人。
- ヴァルター: 浮浪児。機械いじりが得意
- ハンス: 浮浪児。ヒトラー・ユーゲントの制服を着ている
- ダニエラ・ヴィッキ: 映画の音響技師。通称「ダニー」。カフカの友人。
- デートレフ・ニッケル: アウグステの父。共産主義者
- マリア・ニッケル:アウグステの母
- イーダ: ポーランド人労働者の女児。盲目。
- ブーツ: ニッケル家が暮らす集合住宅の管理人
- イツァーク・ベッテルハイム:ニッケル家の隣人のユダヤ人
- エーディト・ベッテルハイム: エーファの妻
- エーファ・ベッテルハイム: イツァークの娘
- ギゼラ・ズーダー: ニッケル家の向かいに住むダウン症の少女
- レオ・ズーダー: ギゼラの弟
- ラウル/リーゼル: デートレフの政治活動の仲間
- ヒルデブラント: アウグステの学校の教師
- ブリギッテ・ヘルプスト: アウグステの同級生。ナチス党員の娘。
- ホルン: 元英語教師・アウグステに英語の辞書をくれた。
あらすじ

1945年7月。ナチス・ドイツが戦争に敗れ米ソ英仏の4カ国統治下におかれたベルリン。
ソ連と西側諸国が対立しつつある状況下で、ドイツ人少女アウグステの恩人にあたる男 クリストフが、ソ連領域で米国製の歯磨き粉に含まれた毒により不審な死を遂げる。
米国の兵員食堂で働くアウグステは疑いの目を向けられつつ、バーベルスベルクにいるはずのクリストフの甥エーリヒに訃報を伝えるべく旅出つ。
しかしなぜか陽気な泥棒カフカを道連れにする羽目になり―ふたりはそれぞれの思惑を胸に、荒廃した街を歩きはじめる。
感想
17歳の少女の目を通して描写される終戦直後のベルリンがリアルに伝わってくる描写は、臨場感があって思ったよりも読みやすかったですが、内容が重めだったので一気に読むには体力がいる感じです。
ドイツはアメリカの他にも今は亡きソビエト連邦の支配下にもあり、東西に分割された国でもあるので、混乱も酷いものだったのでしょう。
敗戦国を舞台にしているのでどうしてもやるせない気持ちになる場面も多く、さらに戦争中の人種差別や逃れられない時代の流れに翻弄されるアウグステやカフカの姿は心に刺さるものがありました。クリストフも、実はその流れの中で心を壊されてしまったのではないか、そのために起きた出来事だったのでは、と思いました。
自分が生きていくために目をそらしてしまった様々な出来事は、彼らに深い傷を残していましたが、彼らの旅はそれをお互いに語ることで少しは癒されていたのではないかと。
現在進行形で進んでいくストーリーと幕間で展開されるアウグステの過去が次第に話の核心へと近づいていく様子は、ミステリーとしても面白く、物語りが終わった後にも続くであろう彼女らの葛藤や思いを想像すると切なくなりました。
旅が終わったあとの彼らが明るい晴れた空を見上げられるようにと願ってしまうようなラストでした。
深緑 野分(ふかみどり のわき)さんについて
神奈川県厚木市生まれ。神奈川県立海老名高等学校卒業。
パート書店員だったが、専業作家に転向。日本推理作家協会会員。
2010年、短編「オーブランの少女」で東京創元社主催の第7回ミステリーズ!新人賞で佳作に入選し、作家デビュー。
2013年、同社より、短編集『オーブランの少女』が刊行され、単行本デビュー。同年、2013年度 AXNミステリー 闘うベストテン第6位に、『オーブランの少女』がランクインした。
2014年、闘うベストテン場外乱闘篇 ROUND2 国内篇第9位に、同作がランクインした。
2016年、『戦場のコックたち』で第154回直木三十五賞候補、第18回大藪春彦賞候補、2016年本屋大賞第7位。
2017年、第66回神奈川文化賞未来賞(奨励賞)。
2019年、『ベルリンは晴れているか』で第160回直木三十五賞候補、第21回大藪春彦賞候補、2019年本屋大賞第3位、第9回Twitter文学賞国内編第1位に輝く。
作品
最後に
始めて読んだ作家さんの作品ですが、面白かったので他の作品も読んでみたいと思います。
最後まで読んでくださってありがとうございました。
コメント
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